今月のお奨め本







  〜2014年 5・6・7月〜



2014年6月初旬から中旬までの12日間

イギリス・湖水地方とハドリアヌス・ウォールのウォーキング旅行に
お客様と行ってきました
湖水地方に6泊!もする、何とも贅沢は旅でした

そのうちウィンダミア周辺に3泊、
ケズウィックに3泊

それぞれ趣の違うB&B(ベッドアンドブレックファースト)に滞在し、
近隣を毎日歩き回っておりました


山ガール


湖水地方は写真には納まりきれない美しい風景があり、
まだまだ見足りない、歩き足りない・・と思いで戻りました

そして、この風景を保存している、切っても切れ離せない関係に
ナショナル・トラストありき!です

その活動に生涯多大な貢献を成し遂げた
ピーター・ラビット生みの親ビアトリクス・ポター縁の地でもあります




ピーターラビット 公式サイトより


歩いていても、自然と名にする風景は正に絵本のピーター・ラビットの世界です



ニアーソーリー村

主な舞台となるニアソーリー村の丘と羊

そして、初めて訪れるお客様へ先ずご案内するのは
ビアトリクス・ポターさんのHill Topや絵本の中でもモデルとなった村々の風景

ここはやっぱり外せません

先ずはポターさんが最も理想とした家として造り上げたHill Topは
そここに絵本の中に生きています



ヒル・トップ
Hill Topの入口


せっかく訪れるのですから、と
出発前に数十年振りに開いたピーターラビットの絵本は
もうすでに何度も目を通しているはずなのに
開くたび新鮮な思いで楽しむことができることに驚きます


ピーターラビットの絵本


今回私達は湖水地方最大の湖・ウィンダミア湖から歩いて
このニアソーリー村にあるHill Topを目指しました





歩き始めて約40分
昨年も訪れたニアソーリー村の風景が目に浮かんできました



タワー・バンク・アームズ
度々絵本の舞台にもなったパブ タワー・バンク・アームズ


Hill Topのお隣のパブ
Tower Bank Arms・タワー・バンク・アームズです


「あひるのジマイマのおはなし」ではこのパブが描かれています

きつねの紳士に騙されて、あやうく丸焼きにされそうになる
あひるのジマイマを助けにいく番犬ケップが仲間を呼びに行くところが
このパブの前庭

この写真では入口前のスペースになり、
現在は駐車スペースになっています


そして、肝心のHill Topへはこのパブを通り越し、
見事は前庭を造っている可愛らしいB&Bを通り越すと
Hill Topのチケット売り場(受付)が見えてきます


B&B ヒル・トップ チケット売り場

左:タワー・バンク・アームズのお隣のB&B  右:ヒルトップのチケット売り場及び受付

今回は総勢9名ということもあり、
事前に予約をしていました

このチケット売り場で予約した時間の15分前に到着し
チケットを購入しなければなりません

*個人のお客様は必ずこのチケット売り場で見学できる時間を確認してください
その日に見学できる時間の予約を事前にしないと
家の中の見学はできません(2014年現在)


ヒル・トップ全景

Hill Topの全景

Hill Topは事前にネットから予約できますが、
実はこの予約時間、曜日など現地へ行ってから冷や汗もの・・

そのお話は別のページでご案内いたします





このHill Topの見学はすでに私自身数回訪れておりましたが、
ここ数年ではお客様とご一緒させていただくことがほとんどで
毎回家の内部の案内はほとんどできていなかったな〜・・と・・


そんなことが頭に浮かんだので
その案内資料として何かないか・・?と探して辿りついた本が
今回ご紹介する1冊です

既存のガイドブックでは殆ど内部の説明はありません

湖水地方、ピーターラビット関係の本を数冊見返してみましたが、
この北野さんのご本が1番詳しく、私には非常に役立ちました

ピーターラビット、ポターさんが大好きな方には
絶対お薦めの1冊です!

是非いらっしゃる前にご一読をお勧めいたします
















北野 佐久子 著 発行元 大修館書店 ¥2,300+税 2013年4月初版




著者の北野佐久子さんはハーブに興味を持ち、
イギリスではその研究で留学をなさった方です






留学時にはハーブだけでなく
そのイギリスでの生活で学んだイギリス菓子を私にとっては
初めて“美味しい!”を教えてくださった方でもあります






著作の中でもすでに数冊ご紹介していますが、
今回のこの1冊は湖水地方の新しいガイドブックとしても必須の1冊です


大手出版社から数えきれないほど出版されている
イギリスの湖水地方を紹介している本がありますが、
この本程!ポターさんやヒル・トップに詳細に描かれた1冊はなかった・・


ビアトリクス・ポターさん
HILL TOP前に立つBeatrix Potterさん


例えば、通常のガイドブックは
Hill Topへの地図や所在地、簡単な家の紹介
(例えば、“ビアトリクス・ポターが手掛けて77歳までの生涯をここで暮らしました”・・とか、
“ピーター・ラビットの物語はここで生まれました”・・
そして“屋内は生前のまま使っていた広間や家具、寝室は
ナショナル・トラストによって保存されています”・・とか・・・)

実際に知りたかったのは、
そのHill Topの内装の説明、
ピーター・ラビットの物語の風景や場面は
家の中でどの部分なのか・・とか・・

ポターさんがこだわり抜いて揃えた家具の由来などなど





実際ポターさんがこの家で暮らしたのは未亡人になってから


しかし・・悲しいかな・・

そこまで英文の説明を読み切る力もなく・・
どうしたら、もっと詳しいことが解るんだろう、と・・
この場所を訪れる度に“何かを見落としている・・”と感じていました


ヒル・トップ入口
HiLL TOPの入口 中は写真禁止



Hill Topは電気のない家なので
昼間でも内部は窓からの光しかありません

しかし、不思議と目が慣れてくると重厚な木の梁や
どっしりとしたオークのテーブルなどが浮かびあがってくるのです

身長は自慢ではありませんが、150cmと少し

そんな背丈の私でもこの小さな家は決して空間が広いとは言えず、
むしろギュッと何かが詰まった感がありました

しかし、実際は小さいのは入口だけで
見学できる部屋6室あり、公開されていない部屋もあります

特に2階の原画が展示されているポターさんの書斎は
光そそぐ窓があり、
狭い感は感じません


ポターさんの机
Hill Topの書斎 ポターさんの机 ナショナルトラストサイトより



そして、何よりもこのHill Topを中心としたポターさんの世界と
描かれた世界1有名なうさぎ


ヒルトップの庭のうさぎ
Hill Topの庭に集まるうさぎ達



ピーターラビットの居る風景を持つ湖水地方は
どれだけポターさんとつながっているのか・・

漠然としたものではなく、
きっちりと知りたいな〜と思いながらも
実際は行ってみてしまうとその風景と空気で満足してしまう私がいました・・

そして、帰ってくる度になんとなく物足りなさを感じ
また行ってしまう・・ということを繰り返していたように思いました


ニア・ソーリー村
Near Sawrey村


ですから、今回は同じ何度も訪れるにしても
違う満足感を持ってみたい!という想いもあり
(もちろん、お客様へご案内できれば一石二鳥!)
北野さんのこの1冊はまさしく今回の旅には私にとっては“救世主”となりました







本書は副題としてついている
「ピーターラビットの故郷をめぐって」の名のとおり
先ずはポターさんが子供時代の湖水地方との出会いから始まります

   1
.
 ロンドンからニア・ソーリー村へ
 
   2
.
 ヒルトップ

   3
.
 ニア・ソーリー

   4
.
 ホークスヘッド

   5
.
 アンブルサイド

   6
.
 ダーウェント湖

   7
.
 ユーツリー・ファーム

   8.  ドーセット、ウェールズ、グロースター



第1章とも言うべき、スタートは“ロンドンからニア・ソーリーへ

このスタートはポターさんの家ではなく、
ヴィクトリア&アルバート博物館から始まります


ヴィクトリア&アルバート博物館



この博物館は大映博物館にも匹敵するもの
英国の文化的博物館でその展示物は多種多様に分かれ、
必ず自身の興味のあるものがある!
(ポターさんの原画もあるそうです)

ポターさんもは当時出来上がったばかりのこの博物館に
足しげく通った、といいます

但し、その時代はまだ現在の呼び名ではなく
“サウス・ケンジントン博物館”でしたが
工芸・美術専門とくれば
まだ年若いポターさんには興味尽きない博物館だったと思います

この時代ウィリアム・モリス全盛期で
なんと!ヒルトップの寝室の壁紙はこのモリスのデザイン「デイジー」だったそうです
(そういう案内が欲しかった!)


モリスのデザイン デイジー
ウィリアム・モリスデザイン“デイジー”


そして、この章ではロンドンで住むポターさんがまだナショナル・トラストも知らない、
湖水地方は単なる夏の避暑地でしかなかった頃

但し、世界1有名なうさぎを生み出した作者の原点がここに垣間見ることができます





第2章ではHill Top

この家がある村ニア・ソーリー村との出会い、
そして本の印税も入り、自分へのため(今風では自分へのご褒美)に
購入した家がこの村のヒルトップでした

しかし、それにはこの小さな村ニア・ソーリー村との出逢いがありました

Hill Topとニア・ソーリー村は切っても切れません

この村でポターさんは生活をするべく
出会った生涯の伴侶と暮らし、
そして、最後はHill Topへ移り住むのです


庭作りから始まり、家の内装、家具を一つ一つ丁寧に造りあげていく工程に
絵本の中でもその場面が生きていて
そこここに物語の風景としてちりばめられています


ヒルトップで飾られているドールハウス
幾つかのおはなしに登場するドールハウス 
ナショナルトラストサイトより



それは「こねこのトム」だったり、「あひるのジマイマのおはなし」
「こぶたのピグリン・ブランドのおはなし」、「ひげのサムエル」
「パイが二つあったはなし」
・・こんなにたくさんのおはなしがこの家から描かれた場面があるんだ・・・

この本からはこの家の中でどんなおはなしの場面になったのか?
また、家だけでなく庭やキッチン・ガーデンも
“あ、そうか!”と思い出す場面に沢山使われていました


ヒル・トップのキッチン・ガーデン
Hill Topのキッチン・ガーデン


そんな場面を次から次へと紹介しているのはこの章になります

そして、各章の最後には必ずイギリス菓子のレシピがあります
ピーターラビットのおはなしに因んだもの、
湖水地方にしかないお菓子など・





お菓子の逸話も愉しいです!





3つ目はニア・ソーリー村

通常既存のガイドブックで紹介されているのは
先ほどのタワー・バンク・アームズ・・くらいでしょうか?

もちろん!外せない素敵なパブであることは間違いありません

本書の写真から美味しそうなこの地域しか口にできない味
カンバーランドソーセージ!が
このタワー・バンク・アームズで召し上がれます


カンバーランド・ソーセージ
カンバーランドソーセージ wikipediaより
この村ではいただけませんでしたが、後日この地方でいただいたものは
ピリッとした味で美味しかった!




しかし、この村のそこここにはやっぱり“おはなし”の背景がたくさんありました

また風景だけでなく、この村に住む“お隣さん”が
物語のモデルにもなっていたそうです

いつもは通り過ぎてしまう村の風景がこの本からすっかりと見方が変わり
素通りできない場所になりました

そして、この村に住む人々の様子も垣間見ることができるのは
中々そうないと思います♪





4つ目はポターさんのご主人が住んでいたニア・ソーリー村から4Km離れた村
ホークスヘッドです

車で向かえばあっという間の距離ですが・・
実は私自身最初にこの村を訪れた時は
本書にあるポターさん16歳当時のように歩いて向かいました

ホークスヘッドはこの地方ならではポターさんが繁殖に力を入れた
ハードウィックシャーという品種の羊のマーケットタウンだったそうです

ハードウィックシャー種羊
ハードウィックシャー種羊



そして、この町で旦那様になるヒーリス氏と出会います
法律家であった彼の事務所は現在ポターギャラリーとして
当時の様子そのままに建物を残し、
原画などを展示しています


ホークスヘッド
ホークスヘッド

ホークスヘッドはランチをいただくには美味しそうなパブやカフェ、
またショップも充実した可愛らしい村です

Hill Topへいらっしゃった際にはお薦めの場所だと思います





5つ目の町はアンブルサイド

この町も何度も訪れている馴染みの町
やはりここで最初に見ておこう!と思うのは
ストック・ギル河の上に立つBridge House(ブリッジ・ハウス)


ブリッジ・ハウス
Bridge House


しかし、ここでご紹介しているのはポターさんのもう一つの顔
それは、“きのこなどの菌類のスケッチ”


ボタンマッシュルーム



このアンブルサイドではガイドブックにも紹介はない
初めて聞くギャラリー
「アーミッシュ・ライブラリー」


ポターさんはご自身が亡くなる2年前1914年、
自身でこの図書館にキノコ、コケ類、地衣類、古代の遺跡などさまざまな主題で描いた
300点のも水彩画のスケッチを寄贈したそうです

なぜこの図書館へ寄贈したのか・・・

またこの“アーミッシュ・ライブラリー”って・・?

それはこの章を読むとその深い関係と
通常のガイドブックには載っていない理由も解ります





そして、6つ目は湖水地方ウィンダミアに次ぐ
大きな町ケズウィック

この町に沿った位置する大きな湖
ダーウェント湖周辺は
ウォーキングメッカの町とも言われています

この湖は「りすのナトキン」、「ベンジャミン・バニーのおはなし」
「ティギーおばさんのおはなし」が舞台となっています


ダーウェント湖
Derwent Water


このダーウェント湖を実際に歩いてみると
この湖の周りには瀟洒な館が幾つか見ることができます

その中のいくつかは当時のポターさん縁の館で、
ポター一家が夏の間に滞在した家だったりします

そこからベンジャミン・バニーのおはなしになったフォー・パーク邸はその一つ

現在は個人所有の館なので見学はできませんが、
その縁や依頼がこの本章に書かれています

マグレガーさんの畑のモデルもこの館の菜園だったそうです・・・
見てみたいですね

そして、そのマグレガーさんの畑のモデルとなった
リングホーム邸も現在は個人所有で中へは入れませんが、
現在は個人所有の別荘として入口に案内のみありました

ハリネズミのティギーおばさんのおはなしに出てくる
山のふもとのスケッチは
このダーウェント湖の西側を南に下ったニューランズ・ヴァレイです



はりねずみのティギーおばさん


洗濯屋のティギーおばさんがえっちらと歩いていく後姿が
この山谷の風景そのまま見ることができます





7つ目のユーツリー・ファーム


ユーツリー・ファームはホークスヘッドからコニストンまでの路線バスから
更に北上した位置にあります

ポターさんが絵本作家から“ミセス・ヒーリス”として
本格的に自然保護、農場経営、養羊行への転機を告げるものは
ヒーリス氏との結婚でした


ヒーリー夫妻
ヒーリー氏と結婚したポターさん



ポターさんは結婚後に湖水地方の中で所有した農場は合計すると15ありました

そのうちでも現在で最も有名なのがこのユーツリー・ファームです

ナショナル・トラストの所有に現在はなっていますが、
数年前にこのYew Tree Farm(ユーツリー・ファーム)を
15年契約で間借り人を募集しました

その時にめでたく間借り人に選ばれた
若いご夫婦はここを農場としてだけではなく
ファーム・スティとしてもスタートさせました


ユー・ツリー・ファームの羊
2011年賞を取ったYew Tree Farmの
ハードウィックシャー種の羊達 
ナショナル・トラストサイトより




歴史あるこの農場は単なるポターさんの、というよりは
農家としても非常に優れた可能性があります

いつかこのYew Tree Farmに滞在したいと思っています





そして、最後は8つ目

旅をするポターさんが訪れた町の紹介です

海辺のドーセット、ウェールズ、グロースター

ドーセットはポター一家が春の大掃除の間に訪れる海辺の町でした

ここでは「こぶたのロビンソンのおはなし」が舞台となっています

そこから同じ海に近い小さな町ライも
お隣のヘイスティングス含め4回ほど滞在していて

この町を舞台にあまり聞きなれない
「はとのチルダーのおはなし」を書いています


このお話しはポターさんの不幸にして亡くなった
婚約者ノーマンの思い出が詰まっています

その婚約者を失った悲しみを癒した場所が北ウェールズ

それはポターさんが生涯の中で最も辛い経験をした時に
この地で時間をかけてその思いを癒した場所でもありました

北ウェールズは英国の中でも荒々しい山肌を持つ風景に
人々の生活がぎゅっと詰まった場所でもあります

そんな雄大な自然に身をおいたポターさんは
その後の人生を手つかずの自然が残る
美しい湖水地方へと導いた原点のようにも感じます

是非訪れてほしい場所の一つです


スノードニア山
北ウェールズの山々



ポターさんご自身の旅が最後のこの章となりました


この1冊は是非これから湖水地方、そしてピーターラビットがお好きな方々にお勧めいたします
既存のガイドブックでは紹介されていない情報が盛りだくさん!

今回の旅でまだまだ訪れていない場所が想像以上にあることが解りました

きっと次の旅の前にも目を通すことになるでしょう










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少しでも楽しんでいただければ嬉しいです





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